歯科とお金 / 公的統計から読み解く
厚生労働省 job tagの参考年収
2025年賃金統計を加工 / 給与を受け取る歯科医師の指標
個人開業者を含む全員の所得平均ではありません。
歯医者の年収は、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では1,062.7万円とされています。2025年の賃金統計をもとにした数字で、給与を受け取って働く歯科医師の年収を知る手がかりです。出典:厚生労働省 job tag「歯科医師」
ただし、これが勤務医から開業医まで、すべての歯医者の収入を表すわけではありません。歯科医院に勤める人の給与、自分で医院を営む人の収入、医院そのものの利益では、数字の意味が違います。
公的統計をたどりながら、働き方ごとの金額と、「歯医者の平均年収」が資料によって異なる理由を見ていきましょう。
数字の意味を確かめる
知りたいのは、どの収入?
歯医者の年収はいくら?公的統計で見る金額
まず、給与として公表されている金額を整理すると、次のようになります。
| 対象 | 年収・年間給与の目安 | 数字が表しているもの | 調査・対象時期 |
|---|---|---|---|
| 賃金統計上の歯科医師 | 1,062.7万円 | 月額給与を年換算し、年間賞与等を加えた額 | 2025年賃金構造基本統計調査を加工 |
| 歯科診療所の常勤歯科医師(院長とは別の区分) | 約679万円 | 年間の給料・賞与の合計 | 第25回医療経済実態調査・直近の事業年度※ |
| 医療法人が運営する歯科診療所の院長 | 約1,458万円 | 年間の給料・賞与の合計 | 同上 |
※医療経済実態調査の対象は、2025年3月末までに終了する直近の事業年・年度。給与の数字は歯科診療所の「開設者別・集計2」によります。後述する、青色申告者を含む収支の集計とは対象範囲が異なります。
出典:job tag「歯科医師」、第25回医療経済実態調査報告・印字336頁(PDF340頁)
個人で開業している歯科医師については、給与と同じ見方ができません。 医療経済実態調査では、個人立の歯科診療所に残る損益差額が、1施設当たり約1,409万円と報告されています。しかし、この全額を院長が自由に使えるわけではありません。給与との違いは、医院の収支から読み解く必要があります。出典:同報告・印字612頁(PDF616頁)
勤務医の年収が、資料によって違うのはなぜ?
「約1,063万円」と「約679万円」では、大きな差があります。どちらを参考にすればよいか迷いますが、まず確認したいのは、誰を、どの期間・方法で調べた数字かです。
2つの統計は、調べ方が違う
job tagの数字は、職業別の賃金統計から計算されたものです。一方、医療経済実態調査の約679万円は、歯科診療所の経営状況を調べるなかで集計された、常勤歯科医師の年間給与です。
| 比べる点 | job tagの1,062.7万円 | 医療経済実態調査の約679万円 |
|---|---|---|
| 集計の枠組み | 賃金統計の「歯科医師」 | 歯科診療所の「常勤歯科医師」。院長は別の行に掲載 |
| 年額の求め方 | 月額給与×12+年間賞与等 | 調査対象年度の給料・賞与の合計 |
| 対象時期 | 2025年6月の賃金と、原則2024年の賞与等 | 2025年3月末までに終了する直近の事業年度 |
出典:job tagの統計に関する留意事項、2025年賃金構造基本統計調査の概要、第25回医療経済実態調査報告・給与表
例えば、job tagの「2025年の年収」は、2025年1月から12月までに受け取った金額を、そのまま合計したものではありません。ある月の給与を12倍し、年間賞与等を加えた指標です。
このように対象や計算方法がそろっていないため、2つの数字を並べて「歯医者の給与が約400万円上がった・下がった」とは言えません。また、差のすべてを勤務先や年齢の違いで説明することもできません。
歯科医院に勤める常勤歯科医師の給与を知りたいなら、医療経済実態調査の該当区分が参考になります。職業としての歯科医師の賃金を調べたいときには、job tagが入口になります。自分の知りたい対象に近い数字を選ぶことが大切です。
開業医の収入は、医院の売上や利益とどう違う?
開業医について調べるときは、医療法人が運営する医院と、個人で営む医院を分けると分かりやすくなります。
医療法人の院長は、年間給与が約1,458万円
第25回医療経済実態調査では、医療法人立の歯科診療所の院長について、給料と賞与の合計が1,458万4,730円と報告されています。出典:同報告・印字336頁(PDF340頁)
同じ調査・医療法人の中で見る給与
年間の給料・賞与の平均 / 単位:万円
同じ調査の医療法人区分では、院長以外の常勤歯科医師の給料・賞与は平均646万1,036円です。上の約679万円は個人立なども含む全体の数字で、集計対象が異なります。このグラフは役職ごとの平均を比較したもので、同じ人が院長になるとこの額まで増える、という意味ではありません。
医療法人の院長の約1,458万円は、医院の売上ではなく院長への給与です。「医療法人の院長」という区分の平均なので、開業医全員の年収として扱うことはできません。
法人に残った利益も、院長個人の給与とは別です。院長の給与に法人全体の利益を足して、「院長の年収」とする比較は避ける必要があります。
個人の歯科医院は、約5,104万円の収益から約1,409万円が残る
個人立の歯科診療所では、収益から費用を引いた「損益差額」が、開設者の収入を考える材料になります。同じ調査の、青色申告者を含む集計では、1施設当たりの平均収支は次のとおりです。
| 収支の項目 | 1施設当たりの平均額 |
|---|---|
| 医業収益 | 5,088.2万円 |
| 介護収益 | 16.2万円 |
| 収益の合計(上記2項目を合算) | 5,104.4万円 |
| 費用 | −3,695.1万円 |
| 損益差額 | 1,409.3万円 |
出典:第25回医療経済実態調査報告・印字612頁(PDF616頁)。個人立歯科診療所396施設、青色申告者を含む集計2、直近の事業年度。原表の千円表示を万円に換算しています。
医院の収益は、そのまま院長の年収?
個人立・1施設当たりの平均 / 単位:万円
- 人件費・材料費などの費用
- 3,695.1 万円(72.4%)
- 残る損益差額
- 1,409.3 万円(27.6%)
損益には、開設者報酬や設備などに充てる部分が含まれ得ます。
収支の関係を動かしてみる
収益や費用が変わると、何が残る?
公表された平均収支を出発点に、2つの金額を別々に変えて計算します。
統計の平均収支
収益の27.6%が損益差額として残る計算です。
操作後は仮の計算です。収益と費用を独立に変え、その他の条件は考慮していません。現実には収益の変化に伴い費用も変わります。年収・手取り・実際の経営成績の予測には使えません。
ここで押さえたいのは、個人立の医院では、開設者自身の報酬が費用の中の給与費に含まれていないことです。残った約1,409万円には、院長の報酬に相当する部分に加えて、医院の設備などに充てる資金も含まれ得ます。出典:厚生労働省「医療経済実態調査」利用上の注意
つまり、「年間約5,104万円の収益がある医院だから、院長の年収も5,000万円」「約1,409万円残るから、その全額が手取り」という理解は、どちらも適切ではありません。
給与を受け取る勤務医と、自分で医院を営む開業医。両者を比べるには、金額の大小だけでなく、その金額から何を負担するのかまで見る必要があります。
また、ここでいう「残る」は帳簿上の損益差額で、銀行口座に残る現金そのものではありません。費用には、建物や設備などの取得費を期間に分けて計上する「減価償却費」も含まれています。出典:同報告・印字612頁(PDF616頁)の費用内訳
平均年収だけで分からないこと
歯医者の年収の中央値は分かる?
平均は、全体の水準を知るための数字です。高い給与を受け取る人が平均を押し上げる場合もあり、「多くの歯医者がこの金額を受け取っている」とまでは言えません。
収入順に並べた中央の人の金額が「中央値」です。今回紹介した平均値だけから、歯科医師の年収の中央値は求められません。平均1,062.7万円という数字も、新卒で得られる給与や、特定の医院で提示される給与を示すものではありません。
平均年収から「手取り」を計算できる?
給与の額と、税金・社会保険料などを引いた手取りは異なります。また、個人医院の損益差額を、給与と同じ計算で手取りに置き換えることもできません。
「歯医者はどれくらい稼ぐのか」を調べるときは、まず勤務医の給与を知りたいのか、院長の給与を知りたいのか、医院の経営状態を知りたいのかを分けてみてください。同じ「年収」という言葉の下に並んでいた数字が、読み取りやすくなります。
さらに詳しく調べたい方は、Dental Hackの医療統計ダッシュボードで、歯科診療所の給与や収支のデータを確認できます。記事や資料に引用するときには、表示されている調査回・年度を確認し、リンク先の原典と合わせてご利用ください。
データ確認日:2026年10月6日。job tagの年収は2025年賃金統計に基づく掲載値です。ダッシュボードの外部賃金比較データは2024年版のため、対象年が異なります。
