歯科医院で治療を受けたり、抜歯を経験したりしたときに、「自分の年齢だと、普通は何本くらい歯が残っているのだろう」と気になったことはないでしょうか。ご家族の歯の健康状態を調べる中で、同年代の目安を知りたくなった方もいらっしゃるかもしれません。
厚生労働省が実施した2024年の全国調査によると、年齢階級別の1人平均現在歯数は、50~54歳で27.4本、55~59歳で27.0本、60~64歳で25.7本、65~69歳で23.4本、80~84歳で19.1本となっています。
ただし、この統計で数えられている歯には親知らずが含まれているほか、詰め物や被せ物をしている歯も「自分の歯」として数えられています。また、平均値は集団全体の傾向を示すものであり、健康かどうかの合否判定や、個人の将来の歯数を決めるものではありません。
この記事では、2024年の公的統計に基づく20歳以上の年齢別平均歯数の一覧表をはじめ、統計における歯の数え方、有名な「8020(ハチマルニイマル)」の目標と平均値の違い、そして次の歯科健診で確認したいポイントをわかりやすく解説します。
年齢別の歯の本数の平均【2024年調査】
年齢別の歯の本数の平均
2024年調査 / 全国・男女計
出典:厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査」表10-12。全国補正値、小数1桁表示。
2024年に実施された厚生労働省の調査結果から、20歳以上の各年齢階級における「1人平均現在歯数」を一覧表にまとめました。
| 年齢階級 | 平均現在歯数(本) |
|---|---|
| 20~24歳 | 28.5本 |
| 25~29歳 | 28.4本 |
| 30~34歳 | 28.1本 |
| 35~39歳 | 28.0本 |
| 40~44歳 | 28.1本 |
| 45~49歳 | 27.9本 |
| 50~54歳 | 27.4本 |
| 55~59歳 | 27.0本 |
| 60~64歳 | 25.7本 |
| 65~69歳 | 23.4本 |
| 70~74歳 | 21.3本 |
| 75~79歳 | 19.5本 |
| 80~84歳 | 19.1本 |
| 85歳以上 | 14.5本 |
※数値の出典:厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査 概要」(表15)およびe-Stat「1人平均現在歯数・喪失歯数、年齢階級別、全国補正値、15歳以上(表10-12)」。2024年10月又は11月の任意の1日に実施され、詳細原表は2026年1月30日に公表されたものです。全国・男女計、口腔診査対象者全員(歯が全くない無歯顎を含む)を対象とし、都道府県人口を反映した全国重み付け補正値です。原票の数値を小数第1位に四捨五入して記載しています。
20代・30代・40代:平均が28本前後の年代
20代から40代にかけては、各年齢階級の平均が28本前後となっています。
- 20~24歳:28.5本
- 25~29歳:28.4本
- 30~34歳:28.1本
- 35~39歳:28.0本
- 40~44歳:28.1本
- 45~49歳:27.9本
親知らずを除いた大人の基本本数は28本ですが、20代前半では28.5本と28本を上回っています。これは、統計の対象に親知らずが生えている人が含まれているためです。40代後半(45~49歳)でも平均27.9本となっています。ただし、平均値だけでは、28本前後の人がどれくらいいるかは分かりません。
50代・60代:50代後半から60代にかけて平均本数が変化
2024年調査では、50代より60代の年齢階級で平均本数が少なくなっています。年代を5歳ごとの前半と後半に分けて確認してみましょう。
- 50~54歳:27.4本
- 55~59歳:27.0本
- 60~64歳:25.7本
- 65~69歳:23.4本
50代では前半が27.4本、後半が27.0本と、どちらも27本台です。一方、60代に入ると、60~64歳では25.7本、65~69歳では23.4本となります。
ここで注意したいのは、「60代の平均」と大まかにひとくくりにするのではなく、表の表示値から計算すると60代前半と後半で2.3本の差があるという点です。「60歳の平均」は60~64歳全体の値とも異なります。同年代の数値を参考にするときは、必ず5歳刻みの年齢区分で確認することが大切です。
70代・80代以上:70代前半は約21本、80代前半は約19本
70代以降の区分を見てみましょう。
- 70~74歳:21.3本
- 75~79歳:19.5本
- 80~84歳:19.1本
- 85歳以上:14.5本
70~74歳では平均21.3本と20本を超えており、75~79歳では19.5本、80~84歳でも19.1本となっています。80代前半の段階でも平均して19本前後の歯が残っており、85歳以上になると14.5本となります。
統計を見るときに知っておきたい前提条件
この一覧表の数字を見る際には、知っておくべき前提が2つあります。
1つ目は、この調査が「同じ人を何年にもわたって追跡した調査」ではないという点です。異なる年齢の人々を2024年の調査時点で一度に調べたデータであるため、「5年経つと誰もが平均して何本失う」とか、「いま50歳の人が70代になったときに必ず何本になる」といった将来を予測する数字ではありません。
2つ目は、この2024年調査の数値は都道府県人口を反映した全国重み付け補正値で集計されているという点です。2022年以前の調査とは集計方法が異なるため、過去の調査値と単純に比較することはできません。
大人の歯は28本?32本?統計で数える歯の範囲
大人の永久歯は、親知らず(第三大臼歯)を除くと28本、親知らずを上下左右4本すべて含めると最大32本あります(出典:日本歯科医師会「歯の数、その異常」)。
ただし、すべての人に32本の歯が生え揃うわけではありません。もともと親知らずが生えてこない人や、歯ぐきや顎の骨の中に埋まったままの人もいます。また、親知らず以外の永久歯でも、生まれつき歯が足りない「先天性欠如」を持つ人もいます。そのため、現在のお口の中にある歯が28本より少ないからといって、そのすべてがむし歯や歯周病によって失われた結果とは限りません。
統計における「現在歯」の診査基準
厚生労働省の調査で集計されている「現在歯(げんざいし)」とは、どのような歯を指すのでしょうか。調査の診査基準(出典:厚生労働省「歯科疾患実態調査の診査基準」)では、お口の中に歯の全部または一部が現れている歯と定義されています。
ここには、健康な歯だけでなく以下のような歯も含まれます。
- むし歯のない健全な歯
- むし歯の治療を受けていない歯(未処置歯)
- むし歯を削って金属やレジンなどの詰め物・被せ物をした歯(処置歯)
- 歯の頭の部分が失われ、根っこだけが残っている歯(残根)
- お口の中に頭が出ている親知らず
一方で、通常より多く生えた「過剰歯」は除外されます。また、顎の骨に人工歯根を埋め込む「インプラント」は現在歯ではなく喪失歯(失われた歯)として扱われます。
自分の歯として数えるもの・数えないものの違い
統計の基準に合わせて、自分の歯を数える際に迷いやすい治療や状態を整理すると、次のようになります。
| 歯の状態・治療内容 | 統計上の数え方 | 理由と注意点 |
|---|---|---|
| 健康な歯・むし歯のある歯 | 数える | お口の中に現れている自分の歯であるため |
| 被せ物(クラウン)・詰め物(インレー) | 数える | 人工物で覆われていても、ご自身の歯根が残っているため |
| 残根(根っこだけ残った歯) | 数える | 根の全部または一部がお口の中に現れている場合 |
| 生えている親知らず | 数える | お口の中に現れている歯としてカウントされるため |
| 完全に埋まっている親知らず | 数えない | 歯ぐきや骨の中に完全に埋まっていて口の中に出ていないため |
| ブリッジの土台(支台歯) | 数える | 両隣でブリッジを支えている自分の歯は数える |
| ブリッジの人工歯(ポンティック) | 数えない | 抜けた部分を補っているダミーの人工歯であるため |
| インプラント | 数えない | 人工歯根であり、統計上は「歯を失った状態」とみなされるため |
| 入れ歯(義歯)の人工歯 | 数えない | 人工の歯は数えない(入れ歯のバネをかけている自分の歯は数える) |
このように、銀歯やセラミックなどの被せ物・詰め物をしていても、ご自身の歯の根が残っていれば「現在歯」として1本に数えます。逆に、インプラントや入れ歯の人工歯は、見た目には歯があってもご自身の天然の歯ではないため、統計の現在歯には含まれません。
なお、奥歯の裏側や被せ物の境目、残根の状態を自分で鏡を見て正確に数えることには限界があります。無理に硬いもので触ったりせず、歯科健診の際に歯科医師や歯科衛生士に正しく確認してもらうことが安心です。
平均より少ないと問題?8020との違いも知っておこう
自分の年齢階級の平均値を知ると、「平均より少ないから異常なのではないか」「平均より多いから自分は安心だ」と考えてしまいがちです。しかし、平均値という数字をそのまま個人の健康の合否判定に当てはめることはできません。
集団の平均値は「健康の合否ライン」ではない
この調査の平均値は、口腔診査を受けた対象者の歯の本数に、都道府県の人口規模を反映する重みを付けて算出した「集団全体の平均」です。
現在歯には、むし歯のある歯や治療済みの歯も含まれるため、平均値より本数が多いことだけで安心とは言えません。逆に、平均より少ない場合も、生まれつきの歯の数や過去の抜歯など、事情は人によって異なります。残っている歯の状態と噛み合わせは、本数とは分けて診査で確認しましょう。
平均値はあくまで同年代の集団の大まかな目安であり、それだけで安心したり諦めたりする基準ではないことを知っておきましょう。
「8020運動」の目標と平均現在歯数の違い
歯科の目標として広く知られているのが「8020(ハチマルニイマル)運動」です。これは日本歯科医師会などが推進している運動で、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という目標を掲げています(出典:日本歯科医師会「歯の数は何本必要?(HAPPY Smile)」)。
この8020運動に関連して、2024年の調査概要(出典:厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査 概要」)では「8020達成者の割合が61.5%」と報告されています。ここで混同しやすいのが、先ほど紹介した「80~84歳の平均現在歯数(19.1本)」との違いです。
この2つの数字には、次のような違いがあります。
- 8020達成者(61.5%):調査対象のうち「75歳以上85歳未満」の年齢層において、自分の歯が20本以上ある人の割合から推計された数値です。80歳ちょうどの人だけを直接測った数字ではありません。
- 80~84歳の平均現在歯数(19.1本):80~84歳の口腔診査対象者について、都道府県の人口規模を反映する重みを付けて算出した平均値です。歯が全くない人から28本以上ある人までを含めた全体の平均を表しています。
つまり、61.5%は一定の年齢層で目標である20本以上を保っている人の割合を示す推計値であり、19.1本はその年代の集団全体の平均本数という、対象と計算方法が異なる別の指標です。
本数だけでなく「噛み合っているか」が大切
8020運動では「20本」という数字がひとつの指標になっていますが、これは「20本を下回ると食事ができなくなる」という意味ではありません。また、「20本以上あればどんな状態でも必ず健康」というわけでもありません。
食事をおいしく味わい、しっかり噛み砕くためには、本数だけでなく「残っている歯が上下でしっかり噛み合っているか(咬合支持があるか)」が非常に大切です。たとえ歯が多く残っていても奥歯の噛み合わせが失われていれば硬いものを噛むのは難しくなりますし、逆に本数だけでは、どれくらい噛めるかや食事に支障があるかは判断できません。本数という数字だけに一喜一憂せず、噛む機能や残っている歯の状態に目を向けることが大切です。
今ある歯を把握するために、健診で確認したいこと
平均本数や数え方の基準を理解したうえで、私たちが次にできる具体的な行動は、定期的な歯科健診で「自分自身の現在のお口の状況」を正しく把握することです。
歯科健診で確認したい3つのポイント
歯科医院を受診した際には、歯科医師や歯科衛生士に次の3点を確認してみることをおすすめします。
- 現在のお口の中に残っている「自分の歯の本数」 親知らずが生えているか、被せ物や詰め物の下にある歯根が健全かを含め、専門的な診査によってご自身の正確な現在歯数を確認します。
- 残っている歯の「健康状態」 本数だけでなく、むし歯の有無、歯周ポケットの深さや歯ぐきの炎症状態、過去に入れた詰め物や被せ物の適合状態など、今ある歯を長く保てる状態にあるかを診てもらいます。
- 奥歯を中心とした「噛み合わせや噛みにくさ」 左右バランスよく噛めているか、上下の奥歯がしっかり接触しているか、食事の際に噛みにくさを感じている部分がないかを相談します。
数字と比べるのではなく、今ある歯を大切にする
同年代の平均本数と自分の歯の本数を比べて、多いか少ないかを過度に気にする必要はありません。大切なのは、これまでに治療した経験にとらわれすぎず、今ある歯を1本でも多く健康な状態で維持し続けることです。
抜歯や治療の経験があれば、その経緯や今困っていることも相談の材料になります。噛みにくい食べ物や場所があれば、診査の際に伝えましょう。まずは次回の歯科健診の機会に、ご自身の歯の本数と状態を確認することから始めてみてください。
年代別の詳しい統計データや、各年齢階級のサンプル数・調査原票の数値をさらに詳しく確認したい方は、公開統計ダッシュボード の「歯の健康・年齢別の現在歯数」をご覧ください。
